SEMの操作方法マニュアル

利点

◎深い焦点深度

焦点深度は人間の目を分解能の基準として,焦点が合っているとみなされる深さ方向の距離で定義される.ある試料を観察する時,最も手前でピントの合う位置と最も奥でピントの合う位置との距離,つまりピントの合う範囲を示すものであり,その範囲が広いことを「焦点深度が深い」,逆に狭いことを「焦点深度が浅い」と表現する.奥行きのある試料を見る場合,この焦点深度が深いほど立体的な像を得ることができ,試料の外形などの情報がわかりやすくなる.焦点深度が浅い場合,試料の手前にピントを合わせると奥がぼやけ,またその逆も生じる.光学顕微鏡では試料から対物レンズを見込んだ角度(レンズの開き角)が小さいと焦点深度は深くなり,SEMでは電子銃から放出される電子ビームの開き角が小さいほど焦点深度は深くなる.一般的に光学顕微鏡のレンズ開き角よりもSEMの電子ビームの開き角は桁違いに小さいためSEMの焦点深度は非常に深くなる.よって金属破面などのような凹凸がある試料を観察する場合,立体的な像を得られるSEMは便利である.

 

◎高分解能

分解能は,その装置で識別できる2点間の最小距離として定義されているもので,顕微鏡では分解能の高低は用いるビームの波長が大きく影響する.SEMは光学顕微鏡に比べ分解能が非常に高いという特徴をもつ.この理由として光学顕微鏡が可視光線を試料に照射して拡大した像を観察するのに対し,SEMでは電子ビームを試料に照射して拡大した像を観察している点が挙げられる.光学顕微鏡の場合,分解能は可視光線の波長に限界があるため理論的に100ナノメートル程度に制限される.しかしSEM内の電子銃から放出される電子ビームは可視光線に比べ波長が非常に短い.これよりSEMの分解能は光学顕微鏡のそれより非常に高く数ナノメートルの観察も可能となる.

 

◎元素分析

 試料に電子ビームが照射されると,様々な電子や電磁波などが放出される.その中には元素特有のエネルギー(波長)をもった特性X線というものが含まれており,このX線を検出することによって試料の元素分析をすることができる.ただ,SEM単体ではできないので,X線分光器と呼ばれる装置を用いる必要がある.2つの装置を用いれば,表面の観察と元素分析を効率的に行える.この元素分析では,電子ビームが照射されている領域にどんな元素が存在するのかという定性分析のほか,特性X線の強度が対応する元素の濃度に比例することを利用して定量分析を行うことが可能である.

 

研究室の走査型電子顕微鏡を使いたいときに使ってください!