目的: スマートフォンやタブレットなど,タッチパネル技術の普及は今後も大きく進むと考えられます.このため,見慣れないタッチパネルを操作する技能が今後より求められていくと考えられます.本研究では,ASD(自閉スペクトラム症)者をターゲットとして,見慣れないタッチパネル操作を学習するプロセスにおける特性を見出すことを目的としています.
方法:16名のASD者と26名のTD(定型発達)者に参加してもらい,タッチパネルを通して,直立姿勢にあるヒューマノイドロボットを片足立ちさせるタスクに挑んでもらいました.終了条件は3回連続1分以内に成功すること,もしくはこれができずに1時間経過した場合としました.
結果:ASD群はTD群より終了条件に至るに時間がかかる(median = 60 min vs 35.7 min; Z = -2.57; p < 0.01),一方で,1回目に片足立ちさせることに成功するのにかかった時間が短い (median = 4.71 min vs 14.0 min; Z = 2.13; p = 0.02)ということが分かりました.
結論:以上の結果は,ASD者はすぐにタッチパネル操作ができるようになるのですが,一定の習熟レベルに達するには時間がかかってしまうということを示唆しています.
Tetsuyou Watanabe, Hirokazu Kumazaki, Taro Muramatsu, Masaru Mimura, Specific aspects of operating an unfamiliar touchscreen for individuals with autism spectrum disorders, Psychiatry and clinical neurosciences, Vol.74, No.2, pp.157-158, 2020. doi:10.1111/pcn.12958